今日、我が家を建てた工務店から連絡がありました。来週予定している講演会に施主として出てくださいというものでした。
以前家のことについて少し書きましたが今日は「未来の子ども達のために森を守る」ということについて書いていきたいと思います。
私達がその工務店の社長にあったのは図書館にあった1冊の本がきっかけでした。その本のタイトルはたしか「世界でたった一つのマンションの中の木の家をつくる」というものでした。
内容としては新築マンションの中に自分達ではじめから納得のいく家を建てようと著者が奮闘し、家を作っていく話です。通常マンションは中の内装から機材まで一括で業者に発注しますので多少間取りは違っても使ってあるものはさして変わるものではありません。
だからマンションを買って何年かして内装をリフォームする人はいますがこの著者は新築マンションの箱だけ買ったのです。はじめから内装を自分達でしようと思ったのは購入してからリフォームすると大量のゴミがでること、費用の面で無駄がでるのでまず不動産のマンションの業者に交渉したのでした。結果的に箱だけを買い、設計事務所に設計を依頼し、家具もすべて注文で家を建てたのでした。
この設計事務所と懇意にしていたのが我が家の工務店でこの家の著者はトイレと台所のドアだけを注文して施工はマンションの職人さんがやったようでしたがその仕事ぶりに私達はこころ引かれたのでした。
私達はそのころ片っ端から建築関係の本をみたり、HPで勉強したり試行錯誤していました。
そのなかで「チルチン人」の本の中で群馬のある工務店が地元の木を使って家を建てるという試みが載っていました。予算も産地直送ででローコストだったし、なにより健康住宅でシンプルなのが気に入りました。
早速そこの工務店に電話をかけて話をしたところ、遠距離なので骨組みだけはやりますがあとの内装は地元の工務店にお願いしてくださいということでした。
そこでこの本の工務店のことが頭に浮かんだのです。さっそく会って話を聞きました。でもそこの工務店がいうには「群馬の木を使うのだったら地元の木を使ってください」「途中からやるのではなくやるならはじめからやらせてください」ということでした。
そこで工務店の友人で昔から何代にも渡って経営しているという製材所に日をあらためて尋ねることになりました。製材所で聞いた話は驚くべき事実でした。
なんでも県産材はブランドではないのでこのままでは売れないこと、秋田杉とか有名な産地の木が不足しているので県産材を産地に送っていること、そしてブランドの名前で県産材を売っていることなどの話を伺いました。
最近国産の木材が見直されつつありますがそれでも外国の輸入材におされぎみで国産材といっても建て主はブランド志向なので全国的に製材所がどんどんつぶれているという話でした。
でも昔の家は地元の木で家を建てていたのです。地元の木を使うということはその土地にあった木材で家を建てるということになります。だから湿気の多いところは木が湿気をすってくれるだろうし、そうしたメリットがあるのです。また地元の木材を使うと輸送費にお金がかからないのでローコストでできるということも大きいでしょう。そして何より森を守るということがあげられます。
いま輸入の木材に押されてしまっている国産材はあまっている状態です。だから森を守る人たちも高齢化になってきています。つまり森をお世話する人が少なくなってきているということです。それは森が荒れてしまうということを意味します。
日本は森林国です。林業をささえるためにも輸入材ではなく国産材を使いましょうという運動がいま全国で起きています。うちの工務店も我が家を建てるのと同時に国産材を守り、職人さんの仕事を見直してもらうために「職人の会」をたちあげました。
昔ながらの職人さんも大手の住宅メーカーにおされてだんだん職域が狭くなってきているそうです。でももともとはすばらしい技術を持った職人さん達なのです。この人たちの職の安定と後継者を育てるためにも国産材を使い、しかるべき工務店で家を建てもらうというのが大事なのです。
そうしないと職人さんの昔ながらの技術が伝承されていかないからです。いま大手メーカーの大工さんはマニュアルどおりの建て方で建てていますのでそうした技術を身に付けている方は少ないそうです。職人さんも減ってきています。それはとても残念なことです。
我が家はこの工務店の職人集団に家を建ててもらったので近所の年配のおじいさんが「いまだき珍しい昔の建て方だねえ」とおっしゃていました。建前のとき鳶の4人衆で「木遣り歌」をうたっていただいたのも印象に残っています。
工務店の社長は言います。「大手メーカーに負けないためには独自の戦略が必要だ」と。つまり国産材と職人の技術をアピールすることによって魅力的な家づくりを施主に提供することが大事だというのです。
この社長はヨーロッパの製材所にも視察にいっていてかなり勉強しています。もともとは神主の家系で幼稚園の先生もしていたという変り種の人です。そして工務店のおやじというよりインテリな人なのです。自分の利益より、森を守ることや職人の仕事の確保に追われているような感じです。
そして設計を依頼した設計士さんもいま国からの以来で国産材をつかってもらうべく講演のために全国を行脚しています。それも我が家を手がけてからそうしたことに忙しくなったようだと工務店の社長が言っていました。
設計士さんは以前からよく建築雑誌に登場するかたなのですが建築家の偉い先生というよりも私達の立場になって本当に親身になってよくやってくださいました。工務店とやりあったり、職人さんに抗議してくださったり、いまではいい思い出です。
こうして振り返ると我が家が何かのきっかけになっていったのかなと思います。そしてこのことが国産材を使って職人さんの仕事を確保できる運動の土台となることを願ってやみません。
そして未来の子ども達のために森林を守っていくことはとても大切なことだと思うのです。
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